YAPPARI HIPHOP初ニューオーリンズ紀行:現地カルチャー編

YAPPARI HIPHOP初ニューオーリンズ紀行:現地カルチャー編

最近の海外旅行はヒップホップ文化研究〜音楽のフィールドワークと化しているYAPPARI HIPHOP!ニューオーリンズ滞在中のヒップホップ関連事項は「ニューオーリンズ旅行のヒップホップあれこれ」にまとめましたが、その他にも現地カルチャーが非常に独特かつディープで興味深かったので書き留めておこうと思います。

▼New Orleans Jazz Museum

ニューオーリンズ・ジャズ・ミュージアムでは、ロックンロール界のバッハ”と呼ばれた男、プロフェッサー・ロングヘア(Professor Longhair)という地元レジェンドの展示と、ドラム・セットの進化とニューオーリンズ・ビートをたどる「Drumsville!: Evolution of the New Orleans Beat」という展示が行われていました。

ビーズに埋もれるプロフェッサー・ロングヘア!こういう色使いを見るとNo Limit RecordsやCash Money Recordsのアルバムカバーのギラギラ感が生まれるのも納得!ニューオーリンズ独自の文化を感じます。

「Drumsville!: Evolution of the New Orleans Beat」の展示は、1840年代に奴隷やネイティブ・アメリカンが日曜日にコンゴ・スクエアに集まって奏でていたドラム・サークルや植民地時代の民兵によるヨーロッパのマーチング・バンドの時代までさかのぼります。ニューオーリンズ音楽の伝統と進化においてアフリカ系アメリカ人が中心的な役割を果たしてきたこと、ドラム・セットの進化とドラミング・スタイルにおいてもニューオーリンズが中心的な役割を果たしてきたという流れの展示で、非常に面白かったです。

こちらは、1840年代以前にコンゴ・スクエアで見つかったアフリカのバンボウラ・ドラムのレプリカとドラム・ペダルの原型です。日曜に行われていたというコンゴ・スクエアのドラム・サークルでは、600人以上の黒人達がアフリカン・ドラムを叩き、踊り、宗教儀式で祝っていたそうです。

そのうちに、コンゴ・スクエアで自分も演奏したいという人が増えるのですが、楽器を買うお金がないため、ラードの保存缶、洗濯板、スプーン、枝を入れた瓶ボトル、小石を入れたアルミ缶など身近な物を使ったホームメイドの楽器を演奏するバンドが現れました。瓶ボトルでポリリズムなグルーヴを奏でていたマルディグラ・インディアンの影響も背景にあるようです。

こちらは1930年代に作られたジャズ・ドラムの祖、ベイビー・ドッズ(Warren “Baby” Dodds)のルドウィグ製ドラム・セット!ベイビー・ドッズが最初に叩いたのも、豚脂のラードの保存缶に穴を空けたホームメイド楽器だったそうです。ニューオーリンズの偉大なドラマー達の多くが、母親が料理で使っていた鍋、フライパン、家具の一部などで毎日ドラムの練習をしていたそうで、この即興精神が最終的にドラムセットの発明に繋がった!という圧巻のストーリーでした。

New Orleans Jazz Museum
https://nolajazzmuseum.org/
400 Esplanade Ave, New Orleans, LA 70116


▼Backstreet Cultural Museum

トレメ地区は、ニューオーリーンズでもアフリカ系アメリカ人の文化の中心地のひとつで、クレオール料理の女王として有名なリア・チェイス(Leyah Chase)のレストラン、ドゥーキー・チェイスなどがあります。そこに、ニューオーリーンズのアフリカ系アメリカ人の伝統文化を写真におさめてきたカメラマン:シルヴェスター・フランシス(Sylvester Francis)が、一軒家を改造して1999年にオープンしたワンマン・ミュージアムがバックストリート・カルチュラル・ミュージアムです。

シルヴェスター・フランシスお爺ちゃんが1人でやっているワンマン・ミュージアムということでB級な香りがプンプンしますが、マルディグラ、ジャズ・フューネラル、セカンド・ラインなどの文化や伝統を自分たちで後世に残そうという心意気にリスペクト!一見の価値がある貴重な品の数々が展示されています。

こちらはマルディグラ・インディアンのチーフたちです。

こちらはマルディグラ・インディアンとヴードゥーの教えがベースになっているガイコツ・ギャング(Skull & Bone Gang)のマスクや衣装です。

セカンド・ラインの衣装やアイテムの数々!

セカンド・ラインの衣装は全て手縫いの刺繍でできており、毎年違うデザインで同じ衣装を何度も着用することはないそうです。

カーニバルで撒かれるビーズにも意味があり、『パープルは「正義(Justice)」グリーンは「誠意(Faith)」ゴールドは「権威(Power)」を表すんだぞ!』とシルヴェスター・フランシスお爺ちゃんからビーズをもらいました。

ジャズ・フューネラルの展示スペースには故Soulja Slimの追悼碑も!

Backstreet Cultural Museum
http://www.backstreetmuseum.org/
1116 Henriette Delille St, New Orleans, LA 70116


New Orleans Historic Voodoo Museum

ブラック・ミュージック好きにとってヴードゥーといえば、D’Angeloのアルバム『Voo Doo』を思い出す方も多いかと思いますが、ヴードゥー教に関する小さなミュージアムにも行ってみました。ブードゥー教は、奴隷貿易で西アフリカからルイジアナに連れて来られたブードゥー教徒によって初めてアメリカに渡りました。その後、ルイジアナのカトリック儀式やネイティブ・アメリカンの慣習と融合され、1800年代のニューオーリンズではヴードゥー教の司祭たちが政治に影響を与えていた時期もあるほど、ニューオーリンズの歴史や文化に深く根付いている信仰です。

ニューオーリンズで一番有名なヴードゥー教の女性司祭がマリー・ラヴォー(Marie LaVeau/1794-1881)です。彼女は自由黒人で、子供を養子にし、空腹の人に食べ物を与え、黄熱病が流行した時には病人を看病し、奴隷たちの逃亡を援助したりと、性別、年齢、人種、貧富を問わず救いを求める人には誰でも魔術を施し助けたそうです。また、政治家や弁護士、実業家などがビジネスや財政的な判断を下す前の相談役としても活躍していたと言われています。自由黒人という立場のため、当時の正確な資料が残っておらず色々と謎に包まれているマリー・ラヴォーですが、現地では人々に愛され尊敬される存在になっているようです。

こちらはヴードゥーとブルースの歌詞で頻出しているというフードゥ(Hoodoo)の伝達経路を表しているマップです。ヴードゥーから派生した宗教は、奴隷貿易と共にブラジルではカンドンブレ、キューバではサンテリアという民間信仰になっています。

ヴードゥーとフードゥとの違いを説明したパネル。ブルースの歌詞にフードゥの儀式や教えに関する言及が多くあるそうです。

こちらは、マルディグラのカーニバルに登場するガイコツ・ギャング(Skull & Bone Gang)がヴードゥーの教えをベースにしているという説明です。

こちらはナイジェリアのヨルバ神話の精霊、オシュンです。ヨルバ人の信仰やブードゥー教の基礎知識、歴史背景など事前に予習していないと難しい内容でしたが、人骨などもありインパクト大でした。

New Orleans Historic Voodoo Museum
https://voodoomuseum.com/
724 Dumaine St, New Orleans, LA 70116


▼ニューオーリンズの公共アート

街中に溢れるミューラルも素晴らしかったです。ニューオーリンズの観光サイトにはミューラル・マップもあり、街中を散策しているだけでも様々なアートを発見して楽しめます。

2015年に亡くなった若きトランペッター:トラヴィス・ヒルと、カラフルで毛穴まで忠実に描かれているサッチモ!

ニューオーリンズの音楽レジェンド、故ドクター・ジョンと故アラン・トゥーサン!

バウンス・シーンを描いたトワークなミューラルとビッグ・フリーディア!

その他にも、街中に多種多様な公共アートが溢れていました。

▼Peaches Records & Tapes

プリデューサーのMannie Freshがここのお店のTシャツを着ているのを発見し、ニューオーリンズにある個人経営のレコード屋にも立ち寄りました。CDからレコード、カセットテープまで品揃えも素晴らしかったのですが、地元ならではのアーティストグッズも印象的でした。

アーティストが聖人化しているキャンドル!

現在お勤め中のラッパー、B.G.の釈放を求める「Free B.G.」Tシャツ!

Peaches Records & Tapes
https://www.peachesrecordsandtapes.com/
4318 Magazine St, New Orleans, LA 70115


アメリカの中でも他の都市にはない独特でディープな文化が根付いているニューオーリンズ!現地のカルチャーを深く掘れば掘るほど面白い発見があり、非常に面白かったです。次回はジャズクラブでジャズを聴いたり、現在もやっているのか不明ですがバウンスのパーティにも行ってみたいなと思いました。興味ある方は是非ニューオーリンズ行ってみてください!

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