DyyPRIDE インタビュー

DyyPRIDE インタビュー

『In The Dyyp Shadow』(深い闇の中から)と銘打たれたファースト・ソロアルバムから約1年半ぶり、セカンド・ソロ・アルバム『Ride So Dyyp』を3月8日にリリースするDyyPrideにYAPPARI HIPHOP直撃インタビュー!SIMI LABきってのリリシスト DyyPrideのディープな世界に迫ってみました。

– アルバム制作は、いつ頃から始めていたんですか?

だいたい、SIMI LABのアルバム「Page1 : ANATOMY OF INSANE」を発売した頃に始めました。一昨年の年末ぐらいからですね。

– ソロ2作目のアルバムを出そうという考えは、いつ頃からありましたか?

2作目を作ろうとは思っていなかったかもしれません。リリックを書く事が生活のリズムに組み込まれていて、一曲できちゃって、また次の曲ができちゃって、このままじゃアルバムできちゃうなみたいな。よし作るぞ!って作ったわけではなく、自然に出来ました。

– アルバムにはどんな想いが込められていますか?タイトルの意味は?

前作「In The Dyyp Shadow」が深い闇の中での話で、そこを抜け出して、走り出しましたと。実際に走り出したら、その深い闇の中で得た教訓が、もの凄く自分のためになっていて、自分のエネルギーになっているということに、よりいっそう気づかされたというか。「Ride So Dyyp」は、直訳するとおかしくなるんだけど、その ”Ride” (乗る)は、とても深いという意味です。自分の魂が自分の肉体に深くライドするといった感じですね。

– 今回のアルバムのプロダクションに、MUJO情とJuelzのビートを起用した経緯は?

MUJO情は、増田さん(SUMMIT代表)がサウンドクラウドで、かっこいいビートメイカーを見つけて、それが俺の楽曲に合いそうだと言ってくれて。自分で実際に聴いて、自分のリリックにも合いそうだなと思って。そうこうしているうちに、4曲も使うことになった。Juelzは、Takuma The Greatがロサンゼルスに何年か住んでいたときに友達になった人らしくて、Takumaのアルバムでも何曲か提供しているんです。

– 日本人の方ですか?

いや、ロサンゼルスに住んでいるメキシカンらしいです。Takumaのアルバムを聴いて、Juelzのビートもカッコ良かったから、トラックを提供してくれないかなって、やりとりしてもらいました。

– 今回、DyyPRIDE自身もトラック制作に携わっていますが、いつ頃から作っていたんですか?

というか、そんなに作ってないんですよ、全然。別に、いつも作業しているっていう感じではないです。パソコンの音楽ソフトの鍵盤で、頭の中で流れたメロディを弾いて、でも、頭の中で流れている通りに弾けなくて。でも、このメロディいいじゃん!みたいなのが出来て、それをループさせるみたいな。ただ、それだけなんですよね。

– アルバムにはSIMILAB以外に、さきほども話にでたTakuma The Greatが参加していますが、どんな経緯での参加になったのでしょうか?

Takumaは、昔から知り合いなんです。俺の兄貴がDJなんですよ。兄貴が、横浜の元町のイベントに出た時に俺も遊びに行ったんですよ。たぶん、俺が中学の頃くらいに。そこでTakumaがラップしていたんです。そこで知り合って、ちょこちょこ会っていたんだけど、しばらく会っていなくて。その後、共通の知り合いがいることが分かって、そこで、あ〜久しぶり!みたいな感じで再会したんです。今回は、Takumaの音源を聴いて、タクちゃん、カッコいいね!俺のアルバムに参加してくださいよって感じですね。

– ソロ・ファーストアルバム、SIMILABのアルバムのリリース、DCPRGのアルバム、OMSBのアルバムへ参加した流れを経て、自身に何か変化はありましたか?

変わらないですね。シンプルに、本をたくさん読んで、映画をたくさん観て、リリックを書くという繰り返しです。ソロの前作やオムスのアルバムとか、今回のアルバムって、一見すると違うものに見えるけど、俺はずっとやり続けている感じですね。やり続けている中で、ここからここまでやってきた分がアルバムに入ったりしています。ただ、自分なりに研究して、今度こうやってみようというのはあります。

– OMSBがフィーチャーされている曲は、OMSBソロ作品『Mr. “All Bad” Jordan』に収録されているDyyPRIDEのフィーチャーされた曲と繋がりがあるように感じたのですが、どうですか?

まぁ、完全には繋がっていないんですけど。これだけの話をすると、日本の社会が精神的な監獄のようなイメージで、精神的に制圧されてきて、長い間刑務所の独房に入っていて、そこからやっと出たって感じで。その独房というのが、おそらく「In The Dyyp Shadow」のことなんです。俺は、結構前からこの社会が精神的な監獄だと仮定したテーマの曲を作ろうと思っていて。そこで、オムスが警察の曲をやってて、たまたま繋がるようなテーマでやっていたので、繋げちゃえみたいな感じになったけど、元々単体であったんですよね。

– 深い闇から抜け出したとのことですが、何かきっかけはありましたか?

20歳のときに、生きるか死ぬかというのを決めたんです。強く生きて行くか、それができずにウジウジするなら今死のうかと悩んで、生きる事に決めたんです。そう決めたんだけど、それが、ある日突然前向きになれた訳じゃなく。50CENTみたいな体に1日でなれないのと同じ感じで、ちょっとずつ鍛えていって、2PACくらいのガタイになって、もっと鍛えて50CENTみたいになるみたいな。だから、深い闇の中から、ある瞬間にパッと出たんじゃなくて、ずーっと前向きに生きて行くことを目指して、それが最近やっと具現化されたという感じです。

– JUMAがイントロででてきますが、いつもあのような感じですか?

はい、いつもあんな感じです。俺も別に、ああいう感じで冷めている時もあれば、全然ノッちゃうときもあります。でも、JUMAは実際もっとヒドいかもしれないです(笑)。

– 「Route 246」では仲間との楽しいひとときも、闇を抜ける助けになったのかなという感じがしました。

もちろんそうですね。もしかしたら、親密な人と絡んでいるときが一番正気に近い状態というか、良い意味で普通にしていられるんですよね。

– 「Visual Trick」の魂の哲学や、「Pain」のNo Pain No Gainといった格言は、日頃読んでいる本や映画からヒントを得たものでしょうか?

実体験ですね。「Visual Trick」に関して、俺も人間なのでイイ車にも乗りたいし、イイ女ともヤリたいし、イイ生活がしたいっていうのはあるんだけど。イイ生活をして、一瞬楽しいかもしれないけど、すぐ虚しくなるだろうなと昔からから思ってたんです。だからこそ、中途半端にチャラチャラ生きていたくないと思ったんですよね。自分の欲望を満たすだけだったら、生きている必要は無いと思ったんです。結局、あの世に持ち帰れるのは、魂の経験値というか、自分がやってきたことや気持ちだけだと思うんですよ。金儲けとか、この世の中の色んな遊びとかあるけど、それはオマケで、そういう経験があってもいいと思うけど、最終的には精神を向上させて、芸術に反映させていくことが一番の目標です。もちろん、欲もあるんですけど、俺の目線から見ると、この社会はあまりにも物質主義が行き過ぎてる様な気がします。お金をたくさん持ってたら何となく偉いって思っちゃう風潮が当たり前の様にあって。もちろん必要な事だとは思いますが、我々の人生にはもっと重要な事があると思います。「No Pain No Gain」は、人生を自ら終わらせたいと思うほどキツイ思いをして、それを乗り越えた先で、与えられた知恵というか哲学というか、それがハンパじゃなくデカくて。当前ですけど、のうのうと生きてきていたら、そういうのには気づけないし。そんなことに気づける機会ってなかなかないなと。そのくらいペインから多くを学びました。

– 普段からリリックを書き溜めるということについて、セラピー的なこともあると思いますか?

そうですね書かないと、頭の中がいっぱいになっちゃって、書き出すまで脳が許してくれないみたいな。そもそも、俺には理屈が必要だったのかもしれないです。辛い思いをしたときに、なんでそういう風になったんだろう?何のために辛い思いをしているのか?と、小さい頃からずっと考えてきたんです。それで、そういう回路ができちゃっているから、何をしているときも、常に色んな疑問があって。例えば、自分が欲しい車のために、一生懸命キツイ仕事をするとして。それは普通の流れですけど、逆にある日突然、いきなりキツイ仕事をしているとするじゃないですか。なんのために、その仕事しているんだろう?という疑問が浮かぶのが自然ですね。訳わからず、何がしたいのかも分からないのに、キツイ仕事なんてしたくないじゃないですか。だけど、そこで、俺はこういう事がしたかったからなんだ、こういうことに気づくためなんだとか、自分の気持ちを理屈で片付けようとするクセがあるんですよ。気持ちなんて、すごく抽象的なものじゃないですか。それを言葉とか理屈で片付けるというか。そして、言葉にして考えようとする時に、もの凄い言葉の量が必要なんです。そのために、本を読んだり、たとえ話とか、膨大な量の情報が必要なんですよね。そのために、俺は色んな芸術を鑑賞して、それを出すっていう。それが、今のところ、少なくとも俺が正気を保っていられる唯一の方法なんです。それが無いと爆発しちゃいます。

– 今作でリスナーにどんなことを感じてもらいたいですか?

もし、悪い状況になったときに、それこそ「No Pain No Gain」ということで、そういう状況を乗り越えてこそ見えてくるものがあり、もの凄く大きなものを得られるということに、気づいてもらいたいですね。もし、自分はただ無意味に苦しみ不幸な人生を歩んでる、と感じてる人がいたら、その試練にどれほど大きな価値が隠されているかという事に気付くきっかけになれば幸いです。人生に失望しているひとに対して、ポジティブなエネルギーをもった「呪文」になればといいなと。言葉にも凄くこだわっているんだけど、たとえ日本語がわからない人が聴いても、不思議と力が湧くような作品にしたかった。

– このアルバムを漢字1つで表すとすると?

「魂」です。

– 次にアルバムを作るとしたらどんな感じになりそうでしょうか?

今よりもっと広い視野を持って作詞に取り組みたいです。

– YAPPARI HIPHOPを読んでいる皆さんにメッセージをどうぞ!

皆さん、くじけず、最後まで走りましょう!

– ありがとうございました。

[2013/02/某日]
Special Thanks to SUMMIT


DyyPRIDE4
DyyPRIDE
https://twitter.com/DyyPRIDE
http://www.summit2011.net/artists/dyypride/
1989年、黒人の父親と日本人の母親の元、横浜に産まれる。
2008年、自分の社会的地位から成るトラウマを拭い去るべく作詞を始める。
2009年、本格的に音楽活動を始める。
ルーツレゲエとウェストコーストカルチャーをこよなく愛し、
幼少期から盛んに映画を鑑賞、将来は映画界への進出も狙っている。
2011年7月:1st Album 「In The Dyyp Shadow」をリリース。
2011年11月:所属グループ・SIMI LABとしての1stアルバムをリリース。
2012年4月:菊地成孔率いるDCPRGのアルバムに参加。
2013年3月:ソロとして2ndアルバム「Ride So Dyyp」をリリース。

【ライブ・スケジュール】

3/15(金) “GRINGO” @ MACHIDA FLAVA – DyyPRIDE “Ride So Dyyp” Release Party
DyyPRIDE/TAKUMA THE GREAT/Rikki/SIMI LAB DJs-IKUMI/OMSB/USOWA/JUMA/HI’Spec/ZAI

4/5(金) “UNSUNG HEROES” @ 恵比寿LIQUIDROOM OMSB & DyyPRIDE Wリリースパーティー
Live: OMSB (feat. SIMI LAB, PUNPEE, 田我流)、DyyPRIDE (feat. SIMI LAB, TAKUMA THE GREAT)、ECD + illicit tsuboi、MSC、THE OTOGIBANASHI’S、太華
DJ:illicit tsuboi、Hi’Spec (SIMI LAB)、YODEL (Swanky Swipe)

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