次世代カロライナ・シーンを牽引する新鋭ラッパー:DaBaby

次世代カロライナ・シーンを牽引する新鋭ラッパー:DaBaby

USヒップホップシーンを賑わすベイビー系ラッパーたち

現在のUSヒップホップ・シーンで「ヤング」「リル」に続き、ラッパー名のトレンドとなっているのが「ベイビー」!Lil Baby(リル・ベイビー)を筆頭に、Sada Baby(サーダ・ベイビー)、SahBabi(サーベイビー)、Bhad Bhabie(バッド・ベイビー)、Bali Baby(バリ・ベイビー)、BBG Baby Joe(BBG・ベイビー・ジョー)、Yung Baby Tate(ヤング・ベイビー・テイト)など沢山のベイビー系ラッパーで賑わっています。その中でもYAPPARI HIPHOPが一押しするのが、2019年1月にインタースコープと契約したDaBaby(ダベイビー)!ということで、まずはバイオグラフィからご紹介します。

DaBaby (ダベイビー)

https://www.instagram.com/dababy/
https://twitter.com/dababydababy
https://www.facebook.com/babyjesus704/
https://open.spotify.com/artist/4r63FhuTkUYltbVAg5TQnk
1991年、オハイオ州クリーブランドにジョナサン・カークとして生まれる。ノースカロライナ州シャーロットに引っ越し、青年期はストリートライフを送る。2014年12月にラッパーになることを決意。それから1カ月後、2015年1月にBaby Jesus(ベイビー・ジーザス)名義で1枚目のミックステープ『NonFiction』をリリース。同年、テキサス州オースティンで開催されたサウスバイサウスウェストに出演し、イベント開催中の3日間、7つの異なるステージでライブを敢行。ステージ経験ゼロにもかかわらず、根性の座ったパフォーマンスで注目を集める。9月には2枚目のミックステープ『So Disrespectful』をリリース。2016年12月にはインディペンデント・レーベル、サウス・コースト・ミュージック・グループと契約し、初のインディペンデント・アルバム『God’s Work:Resurrected』をリリース。本作では、Boosie Badazz (ブーシー・バッドアス/Lil’ Boosie)を客演に迎え、リードシングル「Light Show」は27万回以上のYouTube再生を記録しバイラル・ヒット。イントロで、政治的な理由によりBaby JesusからDaBaby(ダベイビー)へ改名したことを明かす。2017年、ミックステープ『Billion Dollar Baby』『Baby Talk』『Baby Talk 2』『Baby Talk 3』『Baby Talk 4』そして『Back on My Baby Jesus Sh!t』という6作品を立て続けにリリース。同年のサウスバイサウスウェストでは、大人用おむつを着用し話題をさらう。2018年、ミックステープ『Baby Talk 5』と『Blank Blank』をリリース。同年1月に盗まれた銃器所持で逮捕される。11月にはノースライナカロライナ州ハンタースヴィルのウォルマートで起きた銃殺事件に巻き込まれる。2019年1月にインタースコープとメジャー契約!3月にアルバム『Baby on Baby』をリリース。

赤ちゃんネタで攻めるマーケティングの徹底

こちらのアルバムカバーを見ても一目瞭然なのですが、『Baby Talk』『Baby Talk 2』『Billion Dollar Baby』『Baby Talk 3』 『Back On My Baby Jesus Shit』『Baby Talk 4』『Baby Talk 5』 『Baby on Baby』などミックステープのタイトルをはじめ、楽曲タイトル、リリック含めて赤ちゃんネタ満載で徹底しています。

米テレビアニメ『ファミリー・ガイ』の赤ちゃん:ステューウィー
DaBabyが常に首にかけている巨大なジュエリーは、米テレビアニメ『ファミリー・ガイ』のグリフィン家の1歳の次男、ステューウィー・グリフィンのモチーフです。ステューウィーは「1歳の赤ん坊ではあるが、一家の誰をも凌ぐ知性の持ち主で雄弁。精子の頃から世界征服と母親ロイスを殺す事を目標としており、いろいろな武器を発明してはその機会を伺っている。」(Wikipediaより)というキャラクター設定で、なるほど!と妙に納得してしまいます。(最近は、新しく購入したBillion Dollar Baby Entのジュエリーを着用しています)

見た目は赤ちゃんなのに中身は“おっさん”『ボス・ベイビー』
『Baby Talk 5』のカバーアートは、ユニバーサル・スタジオ×ドリームワークス・アニメーションの映画『ボス・ベイビー』のキャラクター仕様になっています。映画『ボスベイビー』やNetflixで公開中のアニメシリーズ『ボス・ベイビー: ビジネスは赤ちゃんにおまかせ!』は、見た目は赤ちゃんなのに中身は“おっさん”、ベイビー・コープ社でバリバリ働き、ボスのように振る舞う赤ちゃんビジネスマンのストーリーなのです。実際に作品を見ると、ステューウィーのジュエリー同様にDaBabyのセンスの良さに感銘を受けるレベルです。

2017年のサウスバイサウスウェストではオムツ姿で登場し話題に!
ミックステープ6作品を立て続けにリリースし攻めの姿勢を崩さなかった2017年は、まさかのオムツ一丁で登場!ラッパーとしてのキャリアを築くために一肌脱いだダベイビー!この行為に関して「あれはマーケティング・シットだ」と語り、ここぞというときの戦略プランの一部であったことを明かしています。サウスバイサウスウェストの映像を見てもDaBabyのストリート・チームが全員同じロゴTシャツを着てポスターを掲げるなど、シーンでの自分の立ち位置や他ラッパーとの差別化など含め、PRやマーケティング戦略が徹底していて感心します。

DaBabyの魅力が最大限に発揮!ユーモア溢れるミュージックビデオ

DaBabyが注目され人気を獲得してきたプラットフォームであり、彼の魅力が最大限に発揮されているのがミュージックビデオ!面白さや楽しさをミュージックビデオに取り込んだ点で、Eminem(エミネム)、Busta Rhymes(バスタ・ライムス)、Ludacris(ルダクリス)といったラッパーと比較されることもありますが、どのビデオ作品も一貫してクリエイティブ!そして、真剣にふざけているショート・フィルムのようなストーリー仕立てで素晴らしいです。

Baby Sitter ft. OFFSET
「Baby Sitter」のミュージックビデオでは、『ビバリー・ヒルズのフレッシュ・プリンスたち』というテレビドラマの設定で、DaBabyとOffset扮するフレッシュ・プリンスたち(悪ガキ)の母親が留守中に子供達の世話を任された父親の苦言から始まります。「お前たちの世話に疲れた。俺はバケーションに行くからベイビーシッターを呼んだ。留守中、酒は飲むな、クサは吸うな、ベイビーシッターとヤルな!」と始まり、途中からピクサー映画『カーズ』のようなラジコンカー同士のカーチェイスもあり、最後にラジコンカーの警察車両が炎上するシーンがありますが、ダベイビーの着ているジャケットをよく見ると『カーズ』のキャラ柄!という小ネタも挟んでいます。

Goin Baby
「Goin Baby」のミュージックビデオは、ツアー移動で飛行機に搭乗したところ、隣席に小型犬が座っていたという実際の出来事から始まります。犬が椅子の上に置かれ、自分のルイ・ヴィトンのバッグを床に置かれ侮辱されたと感じたDaBabyは「次の目的地に到着したら俺たち下ろせ!プライベートジェットで移動すっから!」と次のシーンでは、本気でプライベートジェット機を用意!「ゴーインベイビー」(Goin Baby)はDaBabyが作ったスラングで「素晴らしい/上手くやる」のような意味があります。「なんでも自分のベストを尽くしたらGoin Baby、毎日ジムに通って一生懸命頑張っていたら、そんな君はGoin Baby!女性がドレスアップしてヒール履いてお化粧もバッチリ決めていたらGoin Baby!業界を変革するようなミュージックビデオを撮影して、たった1週間のセルフプロモーションで、デビューアルバムがビルボードにチャートインしたとき、俺はGoin Baby!何でも上手くできたらGoin Baby!」(RollingStoneインタビューより)だそうです。

Walker Texas Ranger
2019年の元旦に公開された「Walker Texas Ranger」のミュージック・ビデオは、米テレビドラマ『炎のテキサス・レンジャー』にヒントを得て制作され、低予算のインディーズフィルムもビックリな特撮!カウボーイハットにレザージャケットを着たDaBabyが乗った車が爆発するなどコミカルなバイオレンス満載です。ふざけた内容であると同時に、このクオリティの高さ!

ちなみに、元ネタのテレビドラマ『炎のテキサス・レンジャー』はこちらです。

Suge (Yea Yea)
「Suge (Yea Yea)」のミュージックビデオでは、2015年に男性2人を車で轢いて死傷させた罪で服役中のSuge Knight(シュグ・ナイト)とダメな郵便配達員をDaBabyが演じています。このビデオで踊っているダンスは、シュグ・ナイトが車で人を轢いたときの動きがネタになっているようで、アメリカではジワジワ流行している模様です

専属の映像プロダクション・チーム:Reel Goats

これらレベルの高いミュージックビデオを制作しているのが、映像プロダクション・チーム、リール・ゴーツ(Reel Goats)です。ミュージックビデオのディレクション、撮影、編集、そしてストーリーを執筆するライターまで所属している集団で、常にDaBabyと共に行動し各地のライブやオフショットを撮影し、YouTube、InstagramなどSNS発信の素材に困らない体制を整えています。

Reel Goats https://www.instagram.com/reelgoats/
▼James Rico https://www.instagram.com/ricodidit/
▼Gemini https://www.instagram.com/gemini.one1/
▼Spicy Rico https://www.instagram.com/iamspicyrico/

ユーモア溢れるミュージックビデオと対極のストリートの現実

グリルズが輝かしい万遍の笑顔、ふざけた映像ストーリーなど面白い部分に注目しがちですが、それと同時にオーセンティックな「ストリート」のリアルさも兼ね備えているDaBaby!ミュージックビデオでも銃や武器、暴力、死体などがコミカルに登場しますが、現実では結構恐ろしいトラブルに巻き込まれています。

ウォルマートの銃射殺事件
2018年の11月5日には、ノースカロライナ州ハンタースヴィルのスーパー、ウォルマートで19歳の黒人青年、Jalyn Dominique Craig(ジェイリン・ドミニク・クレイグ)が射殺され亡くなった事件に巻き込まれます。本人の証言によると、1歳と5歳になる自分の子供と一緒に買い物中、2人の男が銃を見せてDaBabyのジュエリーを奪おうと襲ってきたそう。事件後、本人のIGでのコメントでは「俺の娘や息子が撃たれていたかもしれない。家族と一緒にいるときに、2人の人間が前方から歩いて来て、銃を見せて脅してきたらどうする?」と自己防衛を主張しており、裁判での起訴も取り下げられました。

マスクを被り武装した5-6人の男が自宅に不法侵入
ラッパーのキャリアをスタートさせた後に、銃を持った5-6人の男がDaBabyの自宅に強盗目的で不法侵入する事件がありました。スタジオから1人で自宅のアパートに帰宅したものの、ウィードでハイだったため、そのまま自宅のソファに倒れて寝てしまった。ふと目を覚ますと、家の中で複数の男たちが大声で口論していることに気づきます。仲間ではないと分かったDaBabyは、ジェームス・ボンドのように強盗犯に忍び寄り(本人談)、相手の1人を撃ったところ、相手も5発ほど撃ち返してくる銃撃戦となったそうです。DaBabyは無傷で、強盗犯たちは逃走! トラブル発生時の現場対応能力に優れたストリートスマートですね!

ノース&サウスカロライナのシーンがルネサンス期に突入!?

DaBabyの地元、ノースカロライナ 州は古くはPetey Pablo(ピティ・パブロ)、Little Brother(リトルブラザー)、J Cole(J・コール)、Rapsody(ラプソディ)といったベテラン・ラッパーを排出しているエリアですが、DaBabyを筆頭にノース&サウスカロライナの次世代シーンが注目を集めています。2019年4月には、 J Coleが地元のノースカロライナ州ローリーで開催した『DREAMVILLE FEST 2019』が大成功を収め、DaBabyは自身のレーベル、Billion Dollar Baby Entertainment(BDBENT)を始動し、第1弾アーティストとして、Stunna 4 VEGASという地元アーティストと契約しました。 全体的にまとまった大きな動きは無いものの、個々の力で盛り上がりを見せているノース&サウスカロライナのシーンで注目のアーティストをざっくり簡単にご紹介します。

YBN Cordae (YBNコーデー)
ノースカロライナ州 ローリー出身。YBN Nahmir(YBNナミール)を擁するラップクルー所属ラッパー。Dr.Dreもお墨付き!彼の最新楽曲「Have Mercy」では「Baby Jesus, please save us」というラインがあり、地元の先輩であるDaBaby(元Baby Jesus) を慕っている節もあります。

Stunna 4 VEGAS (スタナ・フォー・ヴェガス)
ノースカロライナ州ソールズベリー出身。DaBabyと頻繁にコラボレーションしているラッパーで、最近DaBabyのレーベルBDBNTと契約し、5月10日にはニューアルバム『Big 4X』をリリース予定!

Lute (ルート)
ノースカロライナ州シャーロット出身。 J.coleのレーベルDreamVille所属ラッパー。

Mez (メズ)
ノースカロライナ州ローリー出身。Dr.Dreの2015年の作品『Compton』に参加。

Childish Major (チャイルディッシュ・メイジャー)
サウスカロライナ州エッジフィールド出身。アトランタを拠点に活動するラッパー/音楽プロデューサー。

Jetsonmade (ジェットソンメイド)
サウスカロライナ州コロンビア出身。 DaBabyの楽曲でよく聴く「Oh lord, Jetson made another one!」というシグネチャータグでお馴染みのプロデューサー。

Supah Mario (スーパーマリオ)
サウスカロライナ州コロンビア出身。Young Thug(ヤング・サグ)やDrake(ドレイク)等に楽曲提供しているプロデューサー。

ラップを始めてから5年も経たないうちにメジャー契約までこぎつけ、ラッパーとしての実力やカリスマ性もさることながら、演技力、ユーモアのセンスからマーケティングの知識まで兼ね備えているDaBaby!映画の主役を演じるスーパースターになる日もそう遠くないのでは?と自信をもってオススメ!是非チェックしてみてください。

One thought on “次世代カロライナ・シーンを牽引する新鋭ラッパー:DaBaby

  1. 詳細な情報までまとめてあって面白い!
    なかなか日本語のこういうページは見当たらないので嬉しいです

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