ケンドリック・ラマー先生によるアメリカ黒人の歴史

みんな大好きRapGeniusのブログでアップされていたケンドリック・ラマーのリリックを扱った「黒人歴史月間」(ブラックヒストリーマンス) [note]アフリカンアメリカンの歴史・伝統等を祝い称える月[/note]に関する記事が面白かったので日本語でアップ!若手ラマー先生のリリックを見てみましょう。オリジナル記事を参考に編集・加筆などしています。黒人歴史月間の2月は過ぎてしまいましたが、色々学んでみましょう!「HiiiPower」の歌詞はhip hop generationでお馴染みの塚田桂子さんの対訳を付けさせて頂きました。それでは、どうぞ!

「黒人歴史月間」に関しては、アメリカの黒人コミュニティ間でもよく議論されていますが、歴史は事実として認められ、敬意が払われるべきものである事に間違いはありません。俳優のモーガン・フリーマンは、黒人の歴史はアメリカの歴史であるのだから、たった1ヶ月に押し込めるべきではないと言っています。これと似たような象徴として、Rakim、KRS-ONE、Nas、Lupe Fiasco、Talib KweliやMos Defといった多くのラッパー達が、黒人の歴史に関する事実をラップで継続的に投げかけています。新任教師ケンドリック・ラマー先生によって語られた『そこまで知られていない黒人歴史の事実トップ7項目』がこちらです。

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その1.歴史に関して

” Bobby Seale making meals
You can’t resist his Hiii Power “
[note]ボビー・シールが食事を用意している
彼のHiii Powerには抵抗できないはずさ
( 日本語訳: kokosoul先生 )[/note]
– 「Hiii Power」より

ボビー・シール(現在75歳)は、アメリカの公民権運動の指導者で、ヒューイ・P・ニュートン等と共にブラック・パンサー党を結成した人物として知られています。しかし、4年間の実刑判決後、公の場から姿を消した後の人生については、あまり知られていません。ラマー先生は、ボビー・シールが、後に料理人として活動していることを言及しています。ボビー・シールは「Barbeque’n With Bobby Seale」というバーベキューの料理本を出版後、妻レスリーと共に料理番組を始めました。公民権指導者という過去の立場からすると、シェフという意外な立ち位置にいる彼ですが、現在でも現役の指導者としてブラックパンサー党による奉仕活動『無料朝食プログラム』[note]ブラックパンサー党が1969年にオークランドの教会で始めた奉仕活動。栄養が不十分な貧困層の児童に対し、朝食を無料で配給する。[/note]を提唱しているそうです。彼は料理のレシピや材料などを説明しながらも、DECLARATION: BARBEQUE BILL OF RIGHTSというバーベキュー版の「権利章典」や歴史的事実、出来事といった異様な要素を自身の料理番組に取り入れ、彼のハイ・パワーは誰にも抵抗できないぜ!とラップしています。


実際の番組映像「Barbeque With Bobby Seale」
※ちなみに、この料理番組の音楽はサン・ラのトロンボーン奏者、タイロン・ヒルが担当しています。

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その2.歴史に関して

While you mothafuckas waiting, I be off the slave ship
Building pyramids, writing my own hieroglyphs
[note]あんたが行き詰まりの状態で待ち続けている間に、俺はとっととおさらばさ
帝国(ピラミッド)を築き、俺のメッセージ(象形文字)を綴るんだ
( 日本語訳: kokosoul先生 )[/note]
– 「Hiii Power」より

ラマー先生は、ここで多くの人が未だ学校では教わらない「元祖エジプト人は黒人である」ということを伝えています。このラインには2つの意味が込められてますが、ひとつ目は、若者に向けて、素晴らしい事を成し遂げ、古代エジプト文明のように忘れがたいような自分自身の歴史を作れ!というメッセージです。ふたつ目は、奴隷制度以前にまで遡り、自分達の潜在能力に気づきなさい!というメッセージです。黒人の祖先は生まれながらの奴隷ではなかったのだから、「奴隷船」からさっさと降りて、自分たちの能力を生かしてやっちまいなさい。そして、より良い世界に変えよう!というポジティブなメッセージです。ビガ!

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その3.歴史に関して

And this is Comp-ton, lions in the land of the triumph
Wrap saran our defiance, ban our alliance
Put burners in the hands, of the black man
  [note]これがコンプトン、俺たちは勝利の国のライオンのようだ
俺達の抵抗をサランラップで包んで、俺達の組織を解散させた
手にバナーを持ってくれ 黒人のな[/note]
– 「The Heart Pt. 2」より

彼は地元であるカリフォルニアのコンプトンは、最強のサヴァイヴァーが住んでいる地域であり、FBI長官、J・エドガー・フーヴァーの指示の下で1956年にコインテルプロ [note][名](米国の)対破壊者情報活動:国家の治安を脅かす恐れのある個人や組織の動きを隠密に封じるFBI活動[/note]の標的となった地域であると言っています。このコインテルプロ活動で、ブラックパンサー党のリーダー達を殺害し解散させることによって、アフリカ系アメリカ人の居住エリアにおける発展向上が抑圧されたと言っています。また、カニエ先生の「Crack Music」でも言われているように、最も重要な事実として、1980年代、レーガン大統領が低所得者層地域にクラック・コカインや銃を提供するよう政府に指示したという事実があります。この件に関しては、今までに様々な憶測や議論が行われて行きましたが、1986年の4月17日に発行されたAP通信の「U.S. Concedes Contras Linked to Drugs, But Denies Leadership Involved」という記事で、政府が事実上それを認めています。

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その4.奴隷制度に関して

Picking cotton from a field that a white man own,
the blacker you are the farther you’re from the white mans home
[note]白人たちが所有している畑で綿花を摘む
肌の色が黒ければ黒いほどお前の父親は白人の家の奴隷だ
(歌詞微妙)[/note]
– 「Vanity Slaves Part 1」より

ラマー先生は、今日のアフリカ系アメリカの人々の間で見られる『カラリズム』争い [note]肌の色の濃薄に関する論争[/note]の多要因となっている過去の奴隷制度について言及しています。プランテーション畑で長時間作業し、日焼けした屋外奴隷の方が、家内労働をした屋内奴隷よりも多くの悲惨な時間を過ごしたと言われています。少しの食事で、朝も昼も夜も辛抱強く働き、妊婦は出産間近まで働かせられ、出産直後もすぐに働かされたそうです。その奴隷たちの多くは競売される際に家族と離れ離れになった離散家族で、一定の基準まで働かないと悲惨な処罰を受けていたといいます。しかし、屋内奴隷より屋外奴隷の方が悲惨なときを過ごしたという話を信じるのは不公平であり、屋内奴隷は別の苦しみを味わっていたという事も忘れてはいけません。肌の色の薄い屋内奴隷の女性の多くは奴隷主にレイプされ、子供を産みました。屋内、屋外奴隷に関わらず、奴隷でいることは、誰にとっても容易な道では無かったのです。

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その5.奴隷に関して

We filling up the gas for Rollies
Upgrade to 26’s after riding Kobe’s
My cousin from the South, slavery started in the South and I bet ya
He overcompensates for the life of his ancestors
[note]ロールスロイスにガソリンいれて
ホイールのサイズを24(コービーの背番号)から26にアップグレード
俺のいとこは南部出身で、奴隷制の発祥も南部
俺のいとこは祖先の分まで補おうとしているに違いないぜ
(歌詞微妙)[/note]
– 「Vanity Slaves Part 1」より

ラマー先生は、ここでも重要なことを教えてくれています。多くのアフリカン・アメリカンの若者が何故、お金を貯金せず、ブリンブリンの時計や高級車など高価な商品を見せびらかす行為にいたるのか?という問いに対しての回答です。おそらく、過去の黒人奴隷の時代に自由の権利(自由や食料、水や服など様々なもの)を手に入れることができず闘っていたため、過去に手に入れられなかったモノを今補っている=浪費しているのではないかということです。「今という時は常に過去を投影している」ということを人々に理解してもらいたいとラマー先生は考えています。

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Run him down and then he gun him down,
I’m hoping that you fast enough
Even the legs of Michael Johnson don’t mean nothing, because…
[note]走って逃げても狙撃される
お前が超速く走れることを願っているけど
マイケル・ジョンソンのような強靭な足でも意味ない
(歌詞微妙)[/note]
– 「Ronald Reagan Era」より

ラマー先生は、バスケ選手のマイケル・ジョーダンではなく、陸上競技選手のマイケル・ジョンソンについて言及しています。ジョンソンは、オリッンピックの400m競争で数々のタイトルを独占し、驚異的かつ稀有なランナーでした。現在は、現役を引退しましたが、オリンピックの400m競走の世界新記録は誰にも破られていません。ジョンソンは、世界的に素晴らしいランナーの1人と考えられています。(といっても、私世代の日本人の間でマイケルジョンソンは有名よね~)

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その7.スポーツに関して

Clocking fast bank like a shot from Patrick Ewing  [note]パトリック・ユーイングのバンクシュートのように素早く金を稼ぐ
(ラップするよりもドラッグを売った方が早く金稼げる)(歌詞微妙)[/note]
– 「R.O.T.C (Interlude) 」より

パトリック・ユーイングはNBAによる「50人の偉大な選手」の1人で、バンク・ショットという、バックボードにボールを当ててゴールに入れるシュートが得意なことで知られ、歴史に名を残す名選手と考えられています。

※歌詞の翻訳など微妙な部分も多いので分らない部分は自分で調べてみてくださーい。

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