A3Cカンフェレンス・レポート:1日目

A3Cカンフェレンス・レポート:1日目

アメリカはジョージア州アトランタにて10月8日(火)から13日(日)に開催されたヒップホップ・カンフェレンス&フェスティバル”A3C Conference and Festival”に行ってきました。今年で15年目を迎えアトランタの名物フェスともなっているA3Cですが、今年から規模が拡大され、総勢250人のスピーカー、500人のアーティストが出演し、ショーケースが50件、セッション150件という6日間!開催直前にA3Cの共同オーナーとなったことが発表された地元アトランタ出身のラッパー:2Chainzは「A3Cには、次のサウスバイサウスウェストになる可能性を感じている」と語っています。今回は、10月10日(木)の日中に開催されたカンフェレンス1日目の模様をレポートします。

昨年からヒップホップのコンベンションに絶対行きたいとA3Cの早割チケットまで購入し気合いを入れて挑んだものの、朝から夕方はカンフェレンス、夜は深夜までライブ/パーティという非常に過酷な日々で、予想はしていたものの完全に体力勝負の過酷なスケジュールでした。そんな状況は他の参加者も同じだったようで、昼に会場に着くと、多くの人がレッドブルやモンスターを飲んで頑張っていました。

A3Cに出演した主なスピーカー

こちらが今年のカンフェレンスの主なラインナップです。T.I.やMike Will Made It、Just BlazeといったアーティストやDapper Danなどの他に、日本ではあまり知られてない著名人や業界人も多かったため、渡米前に出演者全員のプロフィールやバイオグラフィを必死にリサーチして臨みました。

カンフェレンスは主にパネル・ディスカッション、プレゼンテーション、ワークショップ、キーノートスピーチで構成され、ダウンタウンにあるアトランタ・コンベンションセンターと、それに隣接しているホテル・インディゴで行われました。全部のセッションを聞いて回りたいくらい面白そうなコンテンツばかりだったのですが、ボールルーム(大広間)、大会議室から小会議室まで約10カ所の会場で同時進行である上に、急な出演キャンセル、新たなセッションの追加、タイムテーブルの変更などもありバタバタして大変でした。

各セッションの主なトピック

「ビデオ・エンタテイメント界の将来」「サンプリンスのライセンス:あなたが知りたいこと全て」「新時代に女性がリードするテレビ&映画」「スポーツとポップ・カルチャーにおけるマーケティング戦略」「現代におけるビッグ・アーティストのマネージメント」「アーティストのマネージメント:クリエイティブそして革新的であり続けること」「常に才能を模索:ヒップホップを牽引するA&Rたち」「音楽業界のイノベーション:5年後の未来」「アーティスト育成と文化におけるビデオの影響」「音楽がゲームと出会う:ヒップホップ産業のニューフロンティア」「ヒット曲を大解剖!ソング・クレジットの裏話」「ヒップホップ・ジャーナリズムを守る」「デジタルランドスケープ下のラジオで革新的な記録を更新する」「クオリティ・コントロールの内情をのぞく:ヒップホップ界大物アーティストのマネージメント」など。

また、全体のラインナップを見ると「Women In Hip-Hop」「Women Leading Innovation and Creativity in the Music Industry」といったトピックを筆頭にUSヒップホップ/エンタメ/テック産業で活躍する女性達に大きなスポットが当てられ、女性のスピーカーの数が多かったことも印象的でした。

TOYOTAカローラ車とPEN & PIXELのコラボ・キャンペーン

Google StartupとTOYOTAが協賛についていて凄いなと思いながらブースを見ていたら、TOYOTAのカローラと南部ヒップホップのアルバム・カバーでお馴染みのペンピクことPEN & PIXELのコラボ・キャンペーンが実施されていました。日本の大手自動車メーカー、TOYOTAがPEN & PIXELとビジネスしている!という事実を受け止めるのに少し時間を要しました。ということで、実際に回ったセッションがこちら!

プロモーションVSプロモーション:デジタル・ランドスケープ下のラジオで革新的な記録を更新

コロンビア・レコードのAzim Rashid、インタースコープ・レコードのKeinon Johnson、キャピタル・レコードのRic Ross、RCAレコードの Charita Brittenum、ラジオ・パーソナリティのElizabeth Smith, Lili、5人によるラジオ・プロモーションとアーティスト・プロモーションの日常業務についてのパネルディスカッションでした。会場の雰囲気に慣れるのに精一杯で、内容はあまり覚えていません。

サンプリングのライセンス:あなたが知りたいこと全て

30年のビジネス経歴を誇るサンプリング・クリアランスの女王!Deborah Mannis-Gardnerによるプレゼンテーションです。彼女はEminem、Jay-Z、Rihanna、Drakeといった大物アーティストから、インディ・アーティスト、テレビ、映画、ビデオゲーム「グランド・セフト・オート」など多岐に渡るコンテンツ権利クリアランスに携わってきたエキスパート。クリアランスのプロセス、金額のガイドラインや価格を引き下げる裏技などを説明していて、実際にサンプリング・クリアランス業務に携わっている人が沢山参加していました。

TASHA CATOURによるライブ・ビート・メイキング

Future、Tinashe、Young Nudy、Rico Nasty、Keke Palmerなどの楽曲を手がけているジョージア州出身の女性シンガーソングライター/プロデューサー、Tasha Catourによるライブ・ビート・メイキングです。ビートが完成したところで「ラッパーいる?」とオーディエンスに声をかけ、会場にいたラッパーたちがフリースタイルでラップをして盛り上がりました。

DRUMMA BOYによるビート解説

2000年代よりYoung Jeezy、Gucci Maneを筆頭に数々アーティストのヒット曲を世に送り出してきたメンフィス出身のプロデューサー、Drumma Boyが自身の手がけたヒット曲の数々を解説するワークショップの予定でしたが、最初からオーディエンスからのQ&A方式で進み、ビートの解説だけでなく、音楽制作時におけるラッパーとのコミュニケーションの取り方、どうキャリアを積んでいったのかなどの話も聞けて興味深かったです。

ERIC “ET” THOMAS, Ph.D.による「成功を積み上げる」

ヒップホップ・プリーチャー、Eric Thomasによるキーノートスピーチです。自己啓発系セミナーのような感じでしたが、オーディエンスQ&Aで手を挙げた黒人女性が「昨年まで5年間車上生活を送っていて(突然泣きだす)、いまは自分のスキンケア・ビジネスが軌道にのり普通に生活できる状況にまで回復して…」と涙ながらに語り始め、その後も3年の車上生活から抜け出した女性が登場し、黒人女性コメディアン:Tiffany Haddishのように車上生活を強いられるまでの苦境から脱出した女性の多さに驚きました。

※参考記事:何千人もの人が車上生活を強いられどこにもいけないという現実がある

85 SOUTH SHOWのトーク

米MTVの番組「Wild ‘N Out」やBETのコメディ番組で活躍しているコメディアン/俳優/ラッパー/シンガー/作家のコレクティブ!Karlous MillerAnthony “Chico Bean” BeanDC Young FlyClayton Englishの4人で構成される85 South Showのメンバーのトークも大盛況!人気ポッドキャスト番組「85 South Show」をスタートし、現在行われている全米ツアーもソールドアウトという注目のコメディ・コレクティブです。それぞれインスタグラムやVINEなどソーシャルメディアで人気を獲得し、コメディ番組の出演、テレビ番組の司会、アーティスト活動などの仕事を得るまでに至った経緯や、番組制作の工夫、仕事の信念などを聞いて非常に勉強になりました。DC Young Flyに関しては「俺はフッドによくいるような、ただの面白い奴で、友人からVine使ってみたら?と言われたことがきっかけで、こんな人気になるとは思っても見なかった」と語っていました。

アトランタのナイトライフに関するディスカッション

T.I.率いるグランド・ハッスルのジェネラル・マネージャー:Hannah Kang、アトランタで重要な役割を担っている有名ストリップ・クラブ:マジック・シティのオーナー:Michael Barney、2 Chainzをパートナーに迎えレストラン”Escobar”を運営している起業家:Mychel “Snoop” DillardDJ Infamousというアトランタのナイトライフ・カルチャーを彩ってきた4人によるパネル・ディスカッションです。Beyonceや2Chainz、21 Savageなど大物アーティストのバースデーバッシュやプライベート・パーティを仕掛けてきたHannah Kangは、多忙なビジネスパーソンを体現するかのようにセッション中もずっと携帯をいじっていました。Dj InfamousはHannah Kangについて「クライアントが誰であれ、20ドルの予算であっても1億ぐらいかかっているようなパーティにしてしまう。提示された予算以上のイベントに仕上げてしまうのがハンナ!クラブにキリンが登場したり、誰も真似できないような記憶に残るパーティで話題をさらってきた」と語り、Hannah Kangは「このビジネスで成功したかったら、現場を離れずに確実に継続すること!一緒に登壇している3人は昔から知っているし、ストリートで一緒に成長してきた仲だわ。」と語っていました。

GARY VEEのキーノートスピーチ

アメリカの起業家、作家、実業家、ワイン評論家、インターネット・セレブのGary VeeことGary Vaynerchukのキーノートスピーチがこの日の大トリです。デジタル・マーケティングとソーシャルメディア・パイオニアとして最も知名度が高く、ソーシャルメディアを使ったビジネスモデルの先駆者的存在として名を馳せている彼が本当に大人気!ソーシャルメディアの直近の動向としてオススメなのがTikTokとLinkedInで、フォロアーが少なくても今一番オーガニック・リーチを得られるメディアだそうです。まさかと思うだろうが、そこに注力した方が良い!と熱弁していました。

Gary Veeの人気がよくわかる登場シーンがコチラ!オーディエンス総立ち&大歓声で迎えました。

上記のカンフェレンスの他にも、アーティスト、プロデューサー、ミキシング・エンジニア、マネージャー、弁護士などがプロから直接指導を受けることができる業界メンターシップ・セッション、業界のプロに自分の楽曲を聴いてもらいアドバイスがもらえるセッション、アー写撮影ブース、バイオグラフィやプレスキット作成セッションなどもあり若手サポート体制が手厚く驚きました。

カンフェレンス1日目を終えた感想としては、予定していたスケジュールの4割ほどしか動けませんでしたが、それでも情報処理が追いつかないぐらいの内容の濃さで、とにかくバタバタして終了しました。また、単独で参加している人も多く「席に置いてるバッグ見ててもらえませんか?」という会話がきっかけで、その場限りでお互いを支え合う謎の協力体制にも恵まれ、良席をゲットした後にご飯を買いに行ったりトイレに行ったり、A3Cのオーディエンスは親切な方が多く助かりました。


A3Cカンフェレンス・レポート:2日目
A3Cカンフェレンス・レポート:3日目

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